マリア
第28章 慟哭曲
ブランコに降り積もった雪を払い腰かける。
そして、勢いをつけて漕ぎ始めた。
顔をあげるとそこには、
あの日、翔くんに見せてもらった空じゃなくて、激しく雪を吹きかける、重たい鉛色の空が広がっていた。
それでも、その隙間から、
あの日の空が見えるかもしれないと勢いをつけて漕ぐけれど、やっぱり、あの日の空までは遠くて、
さらに勢いをつけて漕いだ。
でも、冬の昼は短くて、辺りはもううっすらと闇に覆われ始めている。
…やっぱ、ダメだ。届きそうにないや。
翔くんに押してもらわないと…
ああ…翔くん、早く来ないかな?
もうすぐ日が暮れちゃう。
早くしないと、空に手が届かないよ…。
泣きそうになっていると、
奇跡的に雲の切れ間から光が差し込んできて、もしかしたら、と手を伸ばす。
もう少し、あと少しと身を乗り出す。
すると、
あの日と同じように、体がふわり、と宙に浮いて、伸ばした手のひらに空を感じた。
ねぇ、翔くん…見て?僕、飛べたよ?
翔くんがいなくても、ほら、ちゃんと空を掴めたよ?
ねぇ、翔くん、聞いてる?
翔くん、てば!!
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える