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原稿用紙でラブレター

第1章 原稿用紙でラブレター


《おまけな職員室》



騒がしかったあいつらが卒業して新学期。


学年会議を終え職員室へ戻る途中、隣に並んで歩く二宮先生の変化に気付いた。


「…あれ?メガネは?」


俺の問いに一瞬ピクリと肩を動かすとチラッとこちらを見る。


「…コンタクトにしました」

「え?いつ?」

「昨日からです…」

「なんで?」


単に疑問に思ったことを聞いてるだけなのに、なぜか二宮先生は耳を赤くして口ごもっていて。


ん?なんだ…?


「それはですねぇ」

「うぉっ!」


その様子を訝しげに窺っていると、後ろから俺たちの間にぬっと入ってきた松本先生がボソッと声をかけた。


「びっ…くりしたぁ、」

「あ、すいません。
二宮先生がコンタクトにしたの何でか分かります?」


ニヤッと笑いながら俺にそっと耳打ちしてくる。


「相葉に言われたらしいですよ。
…キスしやすくなるからって」

「…はぁ!?」

「っ、松本先生っ!」


ニヒヒと笑ってそう告げられ思わずおっきい声が出てしまった。


その反対からも、二宮先生が珍しく焦りながら大きめの声を上げる。


なんだそれ…


あからさまに眉間に皺を寄せて二宮先生を見遣ると、きゅっと唇を噛み締めて赤い顔で反撃しだした。


「ま、松本先生こそ…よくスマホ見てますよね?職員室で」

「え?あ、バレてました?
ふふっ…だって翔が〜」


翔!?


松本先生に振り向くと、だらしなく頬を緩めて恐らく『翔』のことを思い浮かべてるようで。


おい…
どっちもどっちじゃねえか…


同学年の担任になった俺たちは職員室での机の並びも近く、運悪く俺を挟んでそのノロケ合戦は続いていて。


「うちの翔、毎日おやすみコールくれるんですよ。
可愛いでしょ?」

「ぁ、相葉くんも…毎日おはようのメールくれます。
…昨日は一時間電話しましたし」

「そうだ、今度の日曜横浜デートなんだよなぁ」

「私もっ、日曜は相葉くんと…」

「~っ、もうよそでやってくんねえかなぁ!?」


お花畑な会話に耐えられずまたもおっきい声を出してしまい、周りの先生達に驚きの目で見られるハメに。


両隣でバツの悪そうな顔の二人に、苦笑いながら溜息を溢した。



…ま、良かったな相葉も櫻井も。


よし、あとは俺か。


ってここ男子校だったわ…



end

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