テキストサイズ

原稿用紙でラブレター

第2章 年上彼氏の攻略法


《おまけなもう一つのゴンドラ》




「ちょ、こっち来んなって!」


観覧車に乗りこむや否や、松潤が俺の隣に当然のように座ってきて。


「いいじゃん、二人っきりだよ?」

「んなことっ、分かってるし…」


わざとらしく顔を覗き込みながらニコッと笑う瞳に、恥ずかしさが込み上げて目を逸らした。


…分かってんだよ、んなの。


こんな状況…どうしろってんだよ。


ふいに昨晩のことが思い出されて一気に顔に熱が集まる。


つぅかなんで昨日だったんだよ…!


あれがなけりゃ今日だって遅刻せずに済んだのに。


未だ下半身に残る鈍痛に何度顔を顰めたか覚えていない。


「…翔どうした?怖い?」


俯く俺に松潤からふいに声を掛けられる。


思わず顔を上げると、やたら近くにある心配そうな表情にたちまち心拍数が上がり。


「顔赤いけど…もしかして俺のせい?」

「っ!んなわけ、」


反論しようとした口を有無を言わさない早さで塞がれて。


無言で圧し掛かってくる体を押し返すけど、グッと体重を掛けられ更に端へと追いやられる。


貪るようなキスに、昨日のめくるめくひと時を思い出し急激に体が熱くなって。


「んんっ!はっ…やめろって!」

「ん…だって翔が物欲しそうな顔してたからさ…」


無理矢理剥がした唇をぺろりと舐めながら、鋭く誘うような瞳で囁かれる。


これだ。


この顔に昨日は完全に唆されたんだ。


普段は俺の言うことには笑顔で応えてくれる松潤。


だけど…スイッチが入った時の松潤はとんでもなく色気があって。


そのギャップに、俺は…


「翔?いいの?」

「は?何が…?」

「ここでシていい?」

「はぁっ!?んなわけね、」


言い終わる前にニヤリと笑った顔がまた近付いてきて、唇が重なったと同時に体の芯がゾクっと疼くのが分かった。



ー結局。


ジーンズのベルトに手が掛ったところで地上に着き、事なきを得て。


松潤は心底残念そうな顔をしてたけど、あんなとこでありえねぇだろって一喝したら子どもみたいにしゅんとした。


そんな表情にいちいち振り回されてる俺は、悔しいけど相当アイツに惚れ込んでるみたい。


もう後戻りなんかできねーんだからな。


責任取れよ?


…こんなに好きにさせたんだから。





end

ストーリーメニュー

TOPTOPへ