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罪と罰

第1章 1

俺は一人、生まれたままの姿で歩いていた。

灰色の空を見上げ、亀裂だらけの乾いた土を裸足で踏みしめ、どっちに行けばいいかもわからず迷子のように同じ場所をさまよい歩く。

口の中はカラカラで水を求めるが、どこまで行っても川や湖はなく、民家さえも見当たらない。
体力は限界にきていた。しかし朦朧となりながらも一歩、また一歩と前へと進む。

なぜなら俺は進まなければいけなかった。
歩みを止めることは許されないのだ。
周りを見ると、俺と同じように一人で歩いているやつが何人かいた。やつらも俺と同じで、何も身に付けていない。

俺は自然とその中から誰かの姿を探すようになった。知り合いがいないか? 違う…もっと身近な人物だ。俺の…大切な人。


『お兄様、愛してます』


愛しい人の声が頭の中に響き渡る。
そうだ、俺は愛する妹に会いに行くために進まなければいけないのだ。
妹の待っている、あの世まで。

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