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オオカミは淫らな仔羊に欲情す

第7章 鮫島竜二、という男


「―― では、来週から宜しくお願いします」


  私は社屋の通用口まで、わざわざ見送りに
  来てくれた面接担当の主任さんに挨拶して
  外に出た。

  やっ、たぁ! アルバイトGET!

  今夜はちょびっと豪華にコンビニ弁当でも買って、
  お風呂に入ってからゆっくり食べよう!
  

「あ……」


  数メートル先に、非常勤講師・ダサ島 ―― 
  いや、鮫島竜二が立っていた。

  そして、私を見て笑った。
  
  
「お疲れ様。バイト決まって良かったな」


  んむ?? 何故あんたがそんな事知ってんの?
  だいたい、何故あんたはここに立っている?


「……何か?」

「あ、急に愛想が悪くなった」


  ダサ島が笑う。

  やっぱ、何気にムカつく。


「何か御用でしょうか? 私急いでるんですけど?」


  ダサ島はまた笑った。


「メシは済んだ?」


  食べてない ―― だけど、ここは本当の事を
  言ってはいけない! ような気がした。


「えぇ、もちろんきっちりと食べ ――」


  でも私の胃袋が、ダサ島に対して私の言葉を
  否定した。

  また、ダサ島に笑われた。

  ん、もうっ!
  

「今日は色々お世話になったし、奢るよ。
 何か食べに行こう」

「お世話なんてしてませんが?」


  怪しい……

  よく知らない奴を簡単に食事へ誘うか?

  まさか、仕事でとんでもないポカをやらかして、
  自暴自棄になって私を道連れに心中とか……?

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