幸せの欠片
第6章 戸惑いと優しさ
目を疑った
待避スペースに、相葉さんの車が止まっている
何で?
どうして止まっているの?
…ああ、そうか
相葉さんだって、俺に文句の1つも言いたいか
男に、キスされたなんて最悪以外何物でもないし
最後くらい、思い切り罵って貰おう
それくらいしか、俺に出来る事もないから
走る気力はないから、ゆっくり歩いて相葉さんの車に近付いた
ミラーで俺を確認したらしい相葉さんが、運転席から降りてくる
「…かず!」
覚悟はしていても、やっぱり罵られるのは怖い
相葉さんに呼ばれてるけど、顔を上げる事が出来ない
だけど逃げる訳には行かない
俯いたまま進んで、相葉さんの前で足を止めた
もしかしたら殴られるかもしれない
ギュッと目を瞑って、来るかも知れない衝撃を待った
幾ら待っても衝撃は訪れなくて
相葉さんからの罵りも来なくて
ゆっくりと顔を上げたその時
ぺち、と痛くもない感覚を頬に感じた
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