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自分であるために

第10章 俺は俺

 バイトを辞め、お金に困っていた時、偶然立ち寄ったライブハウスで、Dark Moonというバンドのボーカルの代役を急遽勤めることになった。ボーカルさんが急性胃腸炎になってしまったらしい。好きなバンドで歌詞を全て暗記していたので、やりきれた。意外にも好評で、胸を撫で下ろした。

 代役のお礼にと、メンバーからメイクアップアーティストの仕事を紹介された。というのも、薫にイケメンメイクというものを教えて貰い、この頃には、それなりに見えるようにメイクがだいぶ上手くなっていたからだ。

 メイクは可愛くするだけのものじゃない。そのことに薫と出逢ってから気づいた。女の子だけのものじゃないと知った。

 メイクの仕事に触れて、世の中には、コンプレックスに悩んでいる人がたくさんいるんだということを知った。一人じゃなかったんだ。そう思えた。紹介してもらった現場は、幸いにもとてもいいところで、俺は俺でいていいんだと……そう、思えるようになれた。メイクというツールで誰かを幸せにしたい。俺は俺の答えに向かって、全力で突き進もう。

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