あと3秒だけ。
第15章 ふたりの危機。
目が合うと、貴久はニコッと微笑む。
つられて私もニコッと微笑んだ。
給湯室をチラッと覗くと
換気扇の下でいつもの若手の男性軍が
タバコを吸っていた。
私も“いつもの”を買い、
貴久の向かい側に座った。
まるでいつもと何も変わらない光景。
だけど、私にとっては何かが違う。
キラキラして、ウキウキするんだ。
『上野ちゃん、またそれ飲むんだね。』
“上野ちゃん”・・・。
職場になると、貴久は“上野ちゃん”と呼ぶ。
そのことが少し前までは、寂しく感じていたけど
今は新鮮味があって、逆に妙にドキドキしちゃう。