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うちの社長が酷すぎる!

第10章 見せかけの愛


「最近どーなの?」

缶ジュースのプルタブをあけながら、寧々さんは唐突に話を振ってきた

「あー…どう、って?」
「んーヒカルとか彼氏さんとか」

こっちを見ないで続ける寧々さん

「わたし、きののんのそういう話聞いたことないなって」

真面目な顔で袋を漁っている。

…まあ確かに、寧々さんとちゃんと話すのはこれが初めてかも。

「…っていうかヒカルとって!わたしとヒカルはそんなんじゃ…」
「だってもう呼び捨てじゃん?」

あ、と言うと寧々さんは悪戯そうに笑った

「前まできののんのこといじってたのにもう一緒にいないし、変じゃん?」
「う…」
「ヒカルとなんかあったんでしょ?」

問い詰めるような寧々さんの態度に押し負け、わたしはヒカルに抱かれたこと以外を全て話した。
…さすがに、エッチしましたなんて言えないから。

「ふーん?エッチしなかったの?」
「ぅえ!?」

あっけらかんと言われ、思わず近くのクッションを抱きしめた

「ヒカル、明らかにきののんがきてから変わったし。わたし、前のヒカルのがすきだったのになーって」

…ん?なんか不穏じゃない?

「わたしヒカルのこと結構気に入ってたのに、きののん来てからヒカルが変わっちゃって」

新しいジュースをあけながら寧々さんが言う

「でもきののん彼氏いるって聞いて、でもヒカルと仲良さそうでちょっとイライラしてたのー」

何も言えずにいると、寧々さんはわたしを見てニコッと笑った

「あ、でも全然きののんのこと恨んでるとかそんなんじゃないよ!」
「え…あ、はは……」

からわらい…しかできない…

「今はしっかりきののんの恋応援してる」

でも、と寧々さんは続けた

「もしきののんの気持ちがヒカルに向いてないなら、わたしがヒカルに好きになってもらうの応援してほしいなって」
「…っ、あ、当たり前じゃないですか!」

寧々さんは「そう?」と言って笑った

「じゃ、わたしたちちゃんとした友達になろ!応援しあお!」

今日はそれ言いに来たかったの!と寧々さんは言って、その顔に嘘は見られなかった。

「…はい!」

わたしと寧々さんは、はじめてちゃんとした友達に…なった?

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