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幸せの欠片 *超* 番外編

第5章 そしていなくなった



「はは……」

こんな残酷な夢なんか、見たくなかった

いなくなった時の

失った時の、あの辛さは誰にも分からないのに


せめて

きちんと向き合えた上での別れなら、少しは違っていたかも知れない




1年前だってそうだ


俺が保険証の確認なんかしなければ

歩いていく、と言うのを断って無理にでも車に乗せていれば

雨の中走り出したかずを止めて、代わりに俺が走っていれば



…今さら考えたところで、何かが変わる訳ではないけれど



だけど

もう、きちんとお別れをしなければいけない時が来たのかも知れないな


いつまでも忘れられずにウジウジしてる俺を見兼ねて、最期に夢を見せてくれたと思えば


今、俺に出来る事はきちんとかずの死と向き合う事で

そうすれば、きっとかずだって安心して眠りにつける筈



かずの姿は見えないけれど、かずの眠るあそこへ行って

愚痴でも何でも腹を割って伝えて

愛しいと思ってる気持ちもきちんと伝えて



俺がそっちに行った時には笑って会えるように


…その期間だけの別れを、してこよう







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