Hello
第14章 for you *バンビズ
Jun
嬉しいことなんだけど。
最近翔くんが可愛い。
いや、もちろんもともと可愛い人ではあったけど
、……なんていうか……可愛さに拍車がかかった気がする。
俺の横で、柔らかく微笑みながら、酒を飲む翔くん。
手にしているのが、例え渋い芋焼酎だろうが、彼の仕草にかかったら、それはお洒落なシャンパンにすらみえる。
……俺が勝手にかけてるフィルターのせいかな?
酔いのせいで、大きな瞳が潤んでて。
顔も身体も、ほのかに赤くて、これ以上ないくらいの色気を纏ってて。
……たまんない。
「……潤」
「……ん?」
「なに、鼻の下のばしてんの」
……こーいうその気にさせないムードぶち壊しの言葉も。
「……翔くんは可愛いなあって思ってさ」
すんなり返せるだけの余裕まで、培えちゃうくらい、俺はこの人に囚われてしまったみたいだ。
「……ばーか。男に言う言葉かよ」
「いーんだよ」
言って、肩を抱き寄せて顎を上向かせた。
きゅっと小さく力が入った身体。
大丈夫だよ、と安心させるようにその肩ををさすりながら、ゆっくり顔をかたむけたら、翔くんは、静かに瞼を閉じた。
チュッ……と重ねるだけのキス。
柔らかな唇を二、三度楽しみ、そっと顔を離したら、それで、終わりか?というような不満そうな目が俺を追いかけた。
俺は苦笑いして、翔くんの柔らかい髪を撫でる。
「……これ以上すると、このままここで襲っちゃうけどいいの?」
翔くんは、腕を伸ばしてグラスをテーブルに置き、俺の腰に手をまわして、そっと身体を寄せた。
「……いいぞ」
……なんだって??!
俺は、まさにビックリ仰天。
逆に、固まった俺に、翔くんはクスクス笑った。
「……誕生日。なんでもしてあげるっつったのお前だろ」
……言ったけど。
「今日が終わるまで……日付かわるまで……ずっと抱いてて」
「……翔くん……」
「お前をくれよ」
……酔ってるせいなの?
いつもはあまり言ってくれない言葉に、俺は嬉しくなって、ぎゅうっと翔くんを抱き締めた。
翔くんは、応えるように、俺にしがみついてきた。
二人で過ごす翔くんの誕生日は、あと数時間で終わっちゃうから。
いいよ。
ずっと抱いててあげるよ。
俺を全部あげる。
……愛してる。
20180125