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Hello

第18章 I miss you * バンビズ

Jun


今回もついに始まった。

六大会連続だかなんだか知らないけど。
ただでさえ、くそ忙しい翔くんをさらに縛り、会いたくてもすぐには会えない場所に、恋人を連れていかれてしまう、俺にとっちゃ面白くない祭典だ。

今回マシなのは、時差がほぼないくらい。

俺は、そわそわと、翔くんからの電話を待つ。

一人で飲む酒も。
一人で食べる飯も。
何もかも寂しくて。

もちろん、本人には言わないし、悟られないようにはしてるけど。

嬉しいのは、テレビ越しに、生中継で翔くんの顔が見れることくらいだ。

……風邪ひかなきゃいいけどな。

そんなことを思いながらグラスを傾けてたら、テーブルの上のスマホが軽快な音楽を響かせた。

とびついて、嬉しさをおさえながら、スワイプ。

「もしもし……」

『俺』

「うん」

『見た?』

「見た」

『すげーよ、こっち』

楽しそうな翔くんの声音。
俺も、そうみたいだね、と笑う。

ああ……声をきくだけで、安心する。
どんな表情で、話をしてるのか容易に想像できる。

「寒いんでしょ?」

『おお。半端ねーぞ』

「風邪ひかないでね」

『そりゃ、おまえだよ。俺がいないからって、ソファーで寝たりすんなよ』

「寝ないよ…」

喋りながら、また寂しくなってきた。

すると、なにかを察したのか、翔くんが唐突に言った。

『…なあ、潤。今外見れる?』

「え?」

『月。見て』

言われるままに、カーテンをあけ、窓越しに夜空を見上げた。

凛と澄み渡った冬の夜空に輝く、白い月。

「……うん、見てる」

『俺も見てる』

「……」

『同じものを見てるぞ』

「……そうだね」

『寂しくないだろ』

「……」

『な』

「………うん」

なんだか、胸が温かくなる。
遠く離れた別々の場所で、同じものを見ているっていうのが、すごいよね。

「うん……綺麗だよね」

寂しいけど……大丈夫。

だから。
早く帰ってきてね。

いつものあの優しい笑顔で、ただいまって言ってくれるの、待ってるから。

『……潤』

「ん?」

『愛してる』

「……俺も」




惜しみながら電話を切り、再び夜空を見上げた。

同じ空の下にいる翔くんを思い、自然と笑顔がこぼれた。

………大好きだよ。

「……頑張ってね、翔くん」


20180209







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