テキストサイズ

BLUE MOON

第4章 スタート


「たったこれだけ?」

「はぃ…」

働きだしてから三年

余計なものは最初から置かなかった。

それは小さな部屋だってこともあったけど

「スーツケースと段ボール一箱なんて少なすぎでしょ」

無駄なものを買うならその分貯金をして将来に備えようって思ってた。

「だって涼さんが要らないものは処分しろって言ったから」

「そうだけど…」

そう、あのときはまた誰かと心を通わせるなんて考えてもいなかったから。

一緒に住もうと言ってくれたあの日から二人で時間を見つけては家具や雑貨を買い集めた。

涼さんの車のトランクに段ボールとスーツケースを入れて

「ソファーはもう届きました?」

「まだ。夕方になるって」

助手席に乗り込んでシートベルトをかチャリと閉める。

「じゃ、行こうか」

「はぃ。」

涼さんの隣にもだいぶ慣れた。

「飯はどうする?」

「冷蔵庫に何か入ってます?」

「ミネラルウォーターと缶ビールが数本」

「じゃあ、軽く作りますからスーパーに寄ってもらえます?」

「いいね、初日からモモの手料理を食べれるなんて」

会話も緊張しなくなった。

「お蕎麦にしません?」

「引越し蕎麦か、いいね」

私から提案することだって出きるようになった。

「ただいま~」

「おじゃましまーす」

「やり直し」

「ただいま…デス」

まだ怒られることもたくさんあるけど

ピンポーン♪

「このソファーで正解だったな」

「ですね」

同じ場所で同じ空気を吸うことがただ嬉しくて

「涼さん出来ましたよ~」

「おぉ旨そう」

「大袈裟ですよ」

「いただきます」

仕事のときとは違うゆったりした空気に心地よささえ感じるようになった。

「モモ、そろそろ寝ようか」

「…はぃ」

でも、不馴れなこともまだある。

「電気…消してください」

「ハイハイ姫さま」

「…またそうやって」

「いいから、はぃ集中」

「…イヤっ…待って…」

それは彼に愛してもらうこと。

「こんなに固くなってるのに?」

「…言わないで…」

甘い言葉を添えて私の体にキスの雨を降らし

「ダメ…涼さ…」

「いいよ、イって」

彼のすべてを使って私をグズグズに甘やかす。

カーテンに閉ざされた向こうに月は輝いていない。

…今日から始める私たちと一緒

今晩は月が見えない新月だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ