
好きにさせて
第14章 結婚
夕方が近くなると
寒さは増し
人はまばら
それと同時に
辺りは暗くなりはじめ
いよいよ
ライトアップが始まった
「茜、あっちが綺麗なんやて」
俺は
あったかい飲み物を買い
後輩に聞いた
ライトアップのベストポジションに
茜を案内した
そこは
小さな庭園のようになっていて
俺が屈まないと
頭が当たりそうな
小さな門をくぐると
光の世界が広がっていた
「わぁ…素敵…」
「狭いけど綺麗やなぁ」
「うん、綺麗…」
「あっこ座ろか」
「うん」
周囲には
いくつかベンチが用意されてて
その中のひとつに腰を下ろすと
俺は茜に身体を寄せて
茜の腰に手を回した
茜は
飲み物を両手で包み込み
キラキラした目で
ライトアップを見つめる
そして
その茜を
俺は
見つめていた
穏やかな気持ちで
この景色をただ楽しんで
ほんの数分でも
癒されてくれたら…
と、そう思いながら
しばらくすると
この景色目当ての客が
ちらほらと
集まってきた
平日とは言え
ココは人気のスポットらしい
その客の中には
もちろん
子連れの家族もいる
その中の一家族が
俺達の前を横切った
「ねぇママぁ
キラキラきれいだね!」
たどたどしい言葉の女の子は
パパとママに
手を繋がれながら歩き
ママを見上げながら
そう話していた
俺は思わず
「可愛いらしいな」
と言いそうになり
言葉を飲み込んだ
さっき
我慢せんでええと
茜に言われたばかりやのに
やっぱり
俺は素直にその言葉を
口にはでけへんかったんや
その女の子が
いったい何歳くらいなのか
俺には全くわからないが
なんとも微笑ましいこの光景を
複雑な想いで見なければいけない
俺は
不幸なのか?
俺は
ふと
自分で
自分に問いかけていた
