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桜花楼の恋

第10章 切なき逢瀬

北「俺も…誓うからよ‥」

藤「チュッ」



きっと、綺麗な藤の花が見えているんだろうね。



河「くぅーっ、泣かせやがって」



惜しむかの如く接吻を交わす2人を見てて、そう思う。

そして再び “コケコッコォーッ” 無情にも二番鶏の声が響き渡り。



高田「陽が昇り始めます、もう猶予はございません」

藤「分かっている」



藤ヶ谷は、北山に微笑み掛け意を決したかのように立ち上がると。



藤「…みんな‥礼を言う」



俺達に頭を下げ。



五「水くさい事をすんな」

塚「仲間でしょ、ニコッ」

橋「負けないで若様」

宮「心さえ繋がっていれば必ずまた会える、ニコッ」

ニ「そうだよガヤ、フッ」

千「ガヤさん、ヒクッ」



ふっと笑みを浮かべ。



藤「北山、泣いてばかりいるんじゃないぞ」

北「‥‥っ」

藤「お前の笑顔は俺にとって最高の宝なんだから」

北「ばっ、バカ」

藤「笑えって」

北「ふっ、ニコッ」

藤「その笑み土産に貰ってく、フッ」

北「‥‥っ」

藤「またな、ニコッ」



そう言って薄暗闇みの中へ姿を消して行ったんだ。

後に残された俺達は━



橋「行っちゃったね」

五「あぁ」

河「まだまだこれからだ」

宮「始まったばかりさ」

千「宮田」

ニ「俺達は絶対に2人を添わす、キッ」

塚「忙しくなるよ頑張らなくっちゃ」

戸「うん」



と、そのとき。



北「くっ…うぅ‥くっうっわあぁーっ」



まるで、心を引き裂かれるかの如く叫ぶ北山の声に全員がそこへと目を向けたら。



北「藤ヶ谷、ふっ、藤ヶ谷あぁーっ」



顔を見上げ、手を握り拳にし乱れた着衣も気にも止めず号泣している姿が目の中へ飛び込んで来て。



戸「北山、ギュッ」

北「ううっ…あっ‥あぁ」



大丈夫、大丈夫だから。



千「宏光!」

ニ「ミツ!」



ギュッと、その身体を俺が強く抱きしめると重なるように二階堂と千賀も抱きしめて来て。

計り知れない慟哭を…

必死に堪えている北山に、誰もが胸を詰まらせてしまう。

こうして、藤ヶ谷と北山の長い冬が到来し俺達は道を開こうと足掻いて行く事になるんだ。

春が来る日を願いつつ━




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