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桜花楼の恋

第3章 つかの間の休息

千「宏光の心が壊れませんようにどうか神様お願いします護ってやって下さい、パンパン」



あいつ…



千「こっ…これで‥50回目‥くっそ…頑張れ健永‥宏光も頑張っているんだ」



俺の為に、お百度参りなんかしていたのかよ。



千「お願いします神さま宏光に幸せを与えてあげて下さい、その為なら俺なんだってするから」



んばか足、傷だらけじゃん。



藤「あのガキここの息子だろ?よっぽど北山のことが好きなんだな」



くっ…

郭の敷地内に作られた小さな神社、そこに向かって。



千「ハァハァハァ…あと40回」



何度も何回も往復し、頭を下げ祈っている千賀の姿に俺の胸は堪らないほど熱くなってしまい。

ギュッ!



北「もっ、いい千賀、俺は大丈夫だから」

千「宏…光‥」



思わず駆け寄り、後ろから抱きしめてしまう。

そしたら―



千「ごめんね」

北「何を謝っているんだわ」

千「助けてあげられなくて、なんにも出来なくてさ」

北「‥‥っ」



おまえ自分を責めていたのか。



千「こんな…事しか‥できな…ガクン」

北「おい千賀!」

藤「こいつ、もしかして飯抜きもしていたんじゃ」

北「なっ!?」

藤「見ろ髪の毛も濡れている、たぶん水を被ったんだろ」

北「まさか!」

藤「あぁ、あらゆる方法で神頼みをしていたに違いない、お前のために」

北「ばっ、バカやろう」

千「…宏‥光…大好き‥ごめん…許‥して…」



お前はなんも悪くはない、だから苦しむ必要なんてないんだ。



藤「人は生まれ落ちたときから柵(シガラミ)の中にいる健永にとっては遊郭の息子という負い目きっと小さい時から嫌な事たくさん見て育って来たんだろうな」



んだから、こんな所の跡継ぎに相応しくはないんだよお前は。

優しい千賀━

それから、俺と藤ヶ谷は自分たちの部屋へ連れて行き布団の上に寝かせてやり。

その傍らで、何故だかこいつは千賀の髪を撫で包み込むような瞳で見つめていた。

何を考え思っている?お前の心の中には、今いったいどんな事が去来しているんで。

藤ヶ谷…

こうして夜は更けていき、再び朝を迎える。

そして、また俺の。

いや俺達の慟哭の日々が始まろうとしていたんだ、それぞれの想いの中で。




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