ヴァンパイアのCrazy Night
第2章 彷徨える客人
不気味な程に赤い、巨大な満月。
このどこまでも延々と続きそうな森の中。
冷たい風がピュービューと靡き、その風とまるでダンスを踊るように、木々は揺らめき、葉擦れの音を響かせる。
数多のコウモリたちが、何かを騒いでいるようにバサバサと森の中を飛び回っている。
街灯1つないこの暗闇の中、唯一の光は赤い満月。けれど、その不気味な満月とコウモリが飛び交う暗い森の中の組み合わせは最悪で、私を恐怖のどん底に陥れる。
それでも、怖くても、私は終わりの見えない森の中を、ただ途方もなく歩き続ける。
自分が今どこにいるのか、どこに向かっているのかも知らずに。
ふと、その刹那ーー
「わっ!」
突然、一匹のコウモリが私に飛びかかってきた。
「や、やめろって!」
そのコウモリはくちばしで私をつついてきたり、羽でパタパタ私を叩いてきたりと、とにかく向っ腹の立つ妨害をしてくる。
この森から追い出したいのか、それとも単なる嫌がらせなのか…。どちらにせよ、ドン底の恐怖に晒されているこんな事態に、こんな夜行生物と関わり合う余裕さえないというのに、私にとってはこのコウモリは非常に迷惑でしかない。