テキストサイズ

and you

第3章 初恋はみつのあじ M×N




M side



人生ではじめての一目惚れだった。
目があったほんの一瞬。

それまで一目惚れなんてあるわけないって
バカにしてた俺が、まさかの一目惚れ。


それも男に。

そして声を聴いてさらに惚れ込んで。



俺の心を、初めて見たときから
かっさらっていった人は、

「潤くーん。」

俺の隣にいる。


それも、誰よりも近い距離に。
恋人というポジションに。


「ん?」
「いや、ボーッとしてたから。
 大丈夫?」


首を少し傾げて、心配そうに俺を見る。


「大丈夫だよ、和さん。」
「そっか、なら良かった。」


ニコッて可愛らしい笑顔に、
何度でも胸がきゅんとする。



和さんに出会って一年と少し。
付き合うようになって、五ヶ月ほど。


「和さんこそ大丈夫?
 目の下にクマがあるけど…。
 あんまり詰めすぎて勉強しないでね。」
「ん?あー、これゲームだから。」


昨日ついついやり込んじゃったーって
笑ってるけど、嘘だと思う。

丸くて柔らかい手に、くっきりと
ぺんだこが残ってるよ、和さん。


和さんは俺のひとつ先輩。
高校三年になって、受験を控えてる年だし
勉強してないはずがない。

まだ五月に入ったばかりだけど、
でも推薦を狙ってるって言ってたから
きっと密かに努力してるんだろうな。


俺に気を遣わせないためか、心配させないためか
嘘をつく和さんの優しいところも好きだけど
やっぱり心配になっちゃうよ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ