テキストサイズ

テントの中でなんとやら

第1章 濡れた記念日

「なにしにきたんや、ワレ!」

 あんたが言うんかい!

 でもよかった。こうちゃんの声だ。

「ちょっと、こうちゃん、あなたが呼んだんでしょ」

「冗談だよ。入りな」

 こうちゃんは明るい声で言った。

 ファスナーを開けると、吊るされたランプと、ボサボサで伸びっぱなしになった髪に、口が見えないほど生やした髭をたくわえた、薄汚いこうちゃんがいた。

 汚れて、ヨレヨレになった白のタンクトップ……と言うより、ランニングシャツ。

 下はダメージが半端ないジーンズ。












 一昨日会ったよね?

 2日でそうなったの?

「おう、ごめんな、こんな時間に呼び出して」

「そうよ、女の子が一人で夜中に山に入ってんだよ。人が見たら、頭おかしいか、今から呪いの儀式やる人にしか見えないじゃない」

「昨日の今頃、この付近で死体埋めたっていうおばさんが、もう1回確認に来てたけどな」

「やめてよ、そんなこと言うの……でも、こうちゃんに会えて嬉しい」

「もっと嬉しいことがあるぜ」

 そう言って、こうちゃんはなにやら後ろに置いてある大きなリュックの中に、手を入れた。
 
「今日はお前の誕生日だろ」

 正確には一時間前ね。日付け変わってるし。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ