テキストサイズ

あたしの好きな人

第5章 新しい生活




岳人に会う、そう決めたあたしは、会社で有給を取り、

居ない間に困ることがないように、意欲的に働いた。

結婚披露宴に出席するのだからと、美容院やエステに行き、ドレスも買って当日の朝を迎えたんだ。

日曜日だから哲は家に居て、結婚披露宴に行く為の衣装を着て、荷物を持って家を出る。

「そのままの格好で行くんだ?」

ドレスの上に薄手のトレンチコートを羽織り、長めの丈だから目立たないし、

楽だと思って……。

「……おかしい?」

「滅茶苦茶可愛い、途中で浚われるか心配だよ?咲良ってそういうとこ、おおざっぱだよね?」

「だって荷物かさばるし、ドレスがシワになったらやだし?」

「これはおおざっぱじゃなくて、細かいのかな?」

二人で笑い合い、哲にぎゅっと抱きしめられた。

「哲……?」

「必ず帰って来て……、帰って咲良が俺の部屋の合鍵を使ってくれたら、咲良が俺を受け入れたと思うから、俺は敢えて、咲良の部屋で待たない。……咲良が来なければ、諦めるから」

「うん……、大丈夫だよ、だから、待ってて?」

不安そうな顔に手を振って、哲と別れた。

哲の部屋の合鍵を持ってるけど、一度も使ったことはない。

その鍵を使うのは、プロポーズを受ける時。

たぶんそういうことなんだろう。

自分が出す答えはこの時はまだ、分かってなかったんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ