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イジワルな彼女。

第3章 雫-シズク-


「えーっと。
まずは、突然ごめんなさい」

運ばれてきたコーヒーを一口含むと、
目の前の彼女はそう謝罪した。

彼女に促されて、
僕もアイスコーヒーに口をつけた後に

「いえ、僕は別に…」

かっこつけて答えたせいで、
少し無愛想になってしまった気がした。

「さっきの…実は元カレで。
もう一度やり直してくれないかって
しつこくてね」

なるほど。喧嘩?の原因は分かった。
でも僕には、
もう一つ分からないことがあった。

「…」

「…」

またも沈黙。いや、彼女は
何から話すか考えている様子だ。

僕はアイスコーヒーをストローで
くるくるとかき混ぜながら、
彼女に問いかけた。

「大変ですね。
でも、助けてくれたあの人は?」

「あぁ…」

「あの人、いい人でしたよね」

「…そうね」

「大人だし、背も僕よりでかかったし」

「そうだったかな?」

「それにイケメンだったし、
見てみぬふりをしなかった」

「………」

(少し言いすぎたか)そう感じた僕は、
持ったままのストローを口に近づけて
アイスコーヒーを吸い込んだ。


「…君がよかったの」

「え?」

「あ、君の名前は?」

会話が噛み合っていないが仕方ない。

「アユム…ではないですね」

僕がそう言うと、
彼女は少し微笑んだので

「悠(ゆう)です」

僕は本名を告げた。

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