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『ま゜』

第9章 脱出

「……なるほどね」

 音子は、水戸さんがなにをしようとしているのか、わかった。

 水戸さんは、メカ水戸さんの顔にある金属の箱の上に、水の入ったボウルを置いた。

 もう1つのボウルに、板チョコを5枚ほど割って入れた。

 しばらくすると、水が入ったボウルが、ポコポコと音を出しはじめた。

 お湯が沸いた。

 お湯が入ったボウルに、チョコレートが入ったボウルを上から重ねる。

「水戸さん、チョコを湯煎すればいいのね。手伝うわ」と音子が、協働を申し出た。

『ぶぃ゜』

 水戸さんは、メカ水戸さんのすねから、ゴムベラを取り出すと、それを音子に渡した。

「メカ水戸さんて、変形するだけじゃなく、体のあちこちに、そういったものが、収納してあるんだ……」

 水戸さんは、残ったボウルに、生卵を5個入れ、殻を使って、黄身と白身をわける。

 黄身は、溶けたチョコの中に入れた。

「これは、全部固まらないように、よく混ぜればいいのね」

 音子は湯煎で溶かしたチョコと生卵の黄身を、こねるように混ぜた。

 水戸さんは、メカ水戸さんの左手の手首から上、10センチあたりをはずし、手の甲についているゴムキャップを抜いた。

 そこに小さな穴があき、水戸さんはその穴に、泡立て器をはめこんだ。

「ええっ!! まさか、本当の意味のハンドミキサー!?」

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