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本気になんかならない

第27章 熱

トントン

ノックの音がして、俺は返事をしてベッドから身を起こす。
入ってきたのは、白峯とフルーツワゴン。

「何、それ」

「見たまんまのリンゴ」

そう言って、俺の横でリンゴの赤い皮を剥きだした。

そんなの、どうしてわざわざここで…?
と不思議に思う俺に、彼は穏やかに話を始めた。

「つらくても一歩踏みだすと、
のんびり屋な幸せがあとからやってくる。
森を抜ける方法はひとつじゃない」

「何?いきなり」

「うなされていたから。」

そう言いながらも、彼は
リンゴに視線を向けたまま。

……俺、何かを言いました?
焦った俺が口元に手をやると「くす」って、優しく笑った。

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