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本気になんかならない

第28章 green flowers

「部長?あ、バイトの貴志君?」

「はい、何時からですか?」

今、会えるのが一番なんだけど。

俺は玄関から自転車の音がしないかと、耳を澄ましてみた。
でも、聞こえるのは風の音。

「もう来たよ。
自転車?乗ってったよ?
発注が間にあわなかったから今、買い物に行ってもらってるんだ。
そんなかからないだろうし、戻ってくるまでここにいろよ」

「いえ、たいした用事では…」
と、俺はスマホを取りだして見せ

「え?スマホ?
そんなの俺に預けちゃいけないよ?
悪用するかもしれないだろ?」

「するんですか?」

「しようと思ってる人間が素直に
"はい、します"なんて言うか?
晩飯出してやるから、ここで待って直接渡せよ」

「じゃ、裏で待っ…」

「その前に風邪ひくぞ?汗だく小僧
もうひいた?
そんなこと言ってもバカじゃない証明にはならないね。
ウイルスの好みも色々だから」

「出直して…」

「ほれ、歩け。突きあたりを左!」

喋ろうと口を開くと、すぐにかぶされて、一方的な会話に気圧される。

戸惑ううちに、足蹴に案内され

「和君って基本、色白なんだな。
女受けいいわけだ…何かお手入れしてる?」

「っっ!」

俺の服をシャツごとガバッとめくった彼は、指先でサッと胸元をなぞって出ていった。

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