テキストサイズ

本気になんかならない

第29章 オーバーラップ

そんなこんなで、平日が始まる。

停学はすでに解けたんだから
帆澄は朝から元気に登校って、俺の予想、はずれる。

右手の薬指と小指が骨折していたらしい。。

「気づくの、遅いぞ?」

異常を認めたのは、朝食も済んでから。
玄関先で、帆澄がカバンを落として。

テーピングが汚く施してあるその手に目がいって。

白峯は出掛けていたから、俺がクルマで病院に連れていって受診して。
ついでの今、高校に送ってるとこ。

「だって俺、折れたの初めてで。
痛いなーとは思ってたけど、突き指だとばかり」

「突き指でも病院行けよ」

「診てもらっても、処置は一緒じゃないか。
俺はなにより今日、固定されたときが一番痛かった。
あの医者、俺に恨みでもあるのかってくらい強引」

「って、その固定、もうはずしちゃってるし」

はたから見れば、少々腫れてる指にしか見えない。

「だって、この治療、痛すぎる。
もう、骨の経過は俺がみるから、レントゲン技師だけにかかりたい」

帆澄がそう言うのもわからなくもない。
レントゲン写真を確認した医者は、添え木に使うU字型の金属プレートを帆澄の罹患指に挟んだまま体重をかけてサイズをあわせた。
見ていた俺も痛そうだなと思ったけど、当の本人が澄ましているから、どうでもないのかと口をはさまなかったのに。

「つぎからは、"痛い"って言えばいいだろ?
曲がって固まっても、あとあと良くないんだから診てもらわなきゃ」

「あんなヘボ医者に"痛い"なんて言うの、屈辱」

「言わないから大丈夫かと思われるんだよ」

学校駐車場に着いた俺は、もうこれでいいやと
ボールペンを帆澄の指に当てて、包帯を巻きつけてやった。

「兄貴のがアイツよりうまいね」

そんなてのひらを振って、帆澄は校舎に進んでいった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ