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本気になんかならない

第37章 余波

ため息をつきながら、歩いてた。

すれ違う親子連れの笑顔が、まぶしくて。
私の夢は、夢のまま終わるようで。

みじめな涙を隠すように、私は準備中のドアをくぐった。


厨房で鍋を磨いていた友人は何も言わず、私の前にフィナンシエとグラスを運ぶ。

甘酸っぱい香りが鼻をくすぐり、ツワリの胃袋が、空腹をしらせた。

「これ…シンデレラ?」

うなずいて、また持ち場に戻っていった。

有名サクセスストーリーの主人公。
その名をつけられた、フルーティーなカクテル。
もちろん、ノンアルコール。

こんな私でも、いつか幸せになれるって
予言されたようで、ほろっとした。


夫と別れて、このコとふたりで生きていく決心をした。

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