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本気になんかならない

第6章 最後の夜

「本屋くらい明日にしなさいよ!」

「売り切れるかもだろ?」

「限定版なの?私より大切なの?こっちを向いてよ!」

それでも俺が動かないでいると。北里のカバンを持つ手が震え、しずくが光ってこぼれるのが見えた。

「泣かなくたっていいだろ?
…悪かったよ。呼びだしたのは俺だもんな。
ホントは本なんてどうでもいいんだ。意地悪してゴメン」

顔をあげた俺の指が、涙をぬぐう。
すると、その瞳に俺を映した彼女は、やや間を置いてケラケラと笑いだした。

「……どうしたの?そのほっぺ」

「虫歯」

「違うでしょ!
さすが、和君。バレンタインともなると、女のコが黙ってないわよねぇ」

何でそんなことわかるんだ?
とにかく、涙は引っこんだようだ。

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