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本気になんかならない

第43章 扉

***

「今日はお兄さんのところに泊まるの?」

「ううん。こないだ3人目が生まれたから、義姉と子どもたちは実家で過ごしてるの」

「そうなんだ。もっちーも立派な叔父さんだな」

食後はそんなふうな会話をして、席を立ち、クルマに促した。

「これから紗波ちゃんのお迎え?」

「そう。土曜日も預かってくれる園だから助かってるの」

「じゃあ、このまま、園に行くよ?」

ブルンとエンジンをかけると、さっきよりスムーズに走りだす。

「ありがとう。園の近くで降ろしてくれる?そこからはバスで帰れるから」

遠慮する彼女のセリフをさえぎって、俺の意思を放つ。

「せっかくなんだし帰りも送るよ。
それに俺は、北里になら甘えてもらえたほうが嬉しいんだよ?」

「…あ、ありがとう。お願いします」

うつむいて照れる耳が、サラサラと黒髪に隠れた。

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