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本気になんかならない

第44章 オーダー

喜びが溢れだすなかで彼女を見つめると、はにかみながら言う。

「私はグラスを見てって言ったのよ?」

「だって、北里があんまりキレイだから」

カシスの色に染められたふたり。
キスしようと顔を近づけると、彼女は首を逆に傾けて俺を睨む。

「もうっ。私の名前、覚えてないの?」

「………」

俺が黙りこむと、膨れる頬が可愛い。

「私、部屋に戻るからっ」

口を尖らせながら立ちあがろうとする彼女を
お姫様のように抱きかかえて、ひきとめる。

「だめ。愛してる、、紀子」

重なるふたつの影を映す、花笑みの月だった。




(完)

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