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仔犬のパレード

第2章 小屋



ーーーー……ーーー………


智「ただいまー」


翔「…ただいま」


カチャ。と智が入れるように扉を開ける

いくらその子の身体がガリガリといえど 結構な距離を抱いたまま歩いて帰ってきた智
でもその顔に疲れは微塵もない

と、いうか普段から眠そうなその瞳は
寧ろパッチリと開かれていて

不健康そうな程の 華奢な身体と、ついさっきの光景を見ての 何処にそんな体力と精神力があんだか と思う



俺はというと
マジで疲れた

ギリギリと磨り減った気持ちに
常日頃行動範囲の狭い俺の身体への打撃


あぁ…車欲しい

免許持ってないし、つーかそもそも免許持てる年齢じゃないけど
いや、このご時世そんなの真面目に守ってる奴の方が少ないのか



「おかえりー」


奥の扉から出てきたのは、ニコニコと笑う雅紀

こっちもこっちで、ひょろっと身体は細く、手足はアンバランスに長いのが特徴的だ


智「雅紀、ただいま」


雅紀「なにこれ?お土産?」


雅紀が指差したのは、言わずもなが智の腕の中の塊


智「新しい弟だよ」


智はまるで はじめて赤ん坊を御披露目するかのように そっと、その子の顔にかかったコートを外す


雅紀「……弟ぉ??骸骨じゃなくて?」


ニコニコと除き込んだ雅紀の口から出たのは、まぁ素直な感想


翔「おい、皆まで言うな…」


智「骨川筋衛門だよ」


雅紀「骨川スネ夫?名前?」


智「ううん。名前はハチ」


翔「…」


雅紀「ハチ?変な名前ー」


智「この子 犬みたいでしょ?」


どこが?
つかまさかそれ…あの国のハチ公から取ってないよな?


雅紀「…ふぅん。ハチ。なんで目閉じてんの?恥ずかしいの?」


またニコニコと覗き込んだ雅紀は、首をかしげた


智「雅紀。お湯沸かせるか?沸かしてもらっていい?」


雅紀「お湯?…はーい。じゃあね、ハチ」


雅紀はニコニコと手を振って、奥の部屋へ戻っていった




…おい。早く目覚まさないとマジで名前がハチになるぞ





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