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仔犬のパレード

第3章 首輪





翔「ゼリー。冷たいうちに食えよ」


潤「………」


あれから黙ってしまった潤に声をかけ
和也の部屋を出ようとした時だ



…あれ?



目に入ったのは
和也に繋がれている点滴の袋


え?


1度瞬きをしたのは
本来その袋に入っている液体の量が
余りにも減っていたから


…え?
俺、休む前に新しいのに換えたよな
あれからまだ3時間たってない…はず


何となくの時間調整だけれど
だいたい1日に2本のペースで体に入れている水分


袋から視線を下ろせば


ポタポタポタポタ


と、早いスピードで下へと落ちていく



やばっ!!


急いで、滴下の速度を絞ったが
この短時間に、この量をっ……


潤「翔…?」



瞼も唇も固く閉じたままの和也の手首を取り
脈を確める


冷たい…


でも脈はある


1.2.3……


潤「どうしたの?」


………


いつもより少しだけ多い脈の数


脈の強さはいつもと同じ…


呼吸は……


潤「ねぇ!翔!!」


翔「え?…あ…」


大声に はっ。とした俺の目の前にあったのは
潤の大きな瞳


潤「なんかあったの?!大丈夫なの?!和が死ぬなんて言わないよねっ?!!」


翔「ぇ……死ぬ…?
ぁ……あぁ…大丈夫だ…少し点滴が早く身体に行きすぎてて、和也の心臓に負担がかかったかなって…でも今のところ大丈夫みたいだから……死んだりはしない。…驚かせて悪かった……」


呼吸は正常


潤「…点滴……そうなんだ………」


1度点滴の袋を見た潤は、持ち上げた腰を椅子に戻しつつ、安堵の溜め息をついた


いや…俺が焦ったよ





……



こんなミスするなんて…


ポタ……ポタ……


と、今度はゆっくりと落ちていく水分



和也は
相変わらず肌は青白くて
目の回りを囲う青黒い隈


規則的に上下を繰り返す胸


俺は、その胸に手を乗せて



しっかりしなきゃ
俺が…しっかりしなきゃ



そう。何度も何度も何度も
自分に言い聞かせた









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