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仔犬のパレード

第4章 歯






ーー**ーー



智「じゃぁ行ってくる」


雅紀「気を付けてね」


笑ってそんな会話をしてんのは、此処の出入口の扉前


潤は、いない
結局あの日、智に礼を言った様子はなかった



智「雅紀、ありがとう
翔。暫く頼んだよ」


翔「…あぁ」


華奢な身体を際立たせる大きめの黒のパーカーに、脚の形が分かる細身のジーンズ

其処へ行く時は、いつもその格好



今日から、智が居なくなる



智「雅紀、翔と2人にしてくれる?」


翔「え?」


雅紀「……いいよ」


雅紀はニコニコと、俺と智を交互に見て、くる。と向きを変えて奥の広間へと消えていった


翔「え?なにか ぅえっ?!い!…んっ!」


がっ!と首輪を捕まれ、乱暴に智との距離を縮められ
息つく暇なく口を塞がれた


…いっつ〜〜!!


っ歯!前歯ぶつかったし!


そんな文句の1つでも言ってやりたくなるような行為


でも塞がれてたら言えやしない




翔「ンフ……んっ…さと、し……」


合間合間でなんとか声を出してみてはみたものの…


翔「…はぁっ」


逃げても逃げてもしつこく舌を絡められ、歯列を舐められるキスに否応なしに息が上がる


…てか
どーした!?


こんな…


さっきの衝撃でボヤけた視界を智に合わせれば


至近距離の薄く開いた智の瞳とぶつかった



その瞬間


っ!


今度は、ぐい!と身体ごと引き寄せられ


智の2つの手が俺の背中に回される
それは、痛いくらいに強く


智「…しょ ぅ……」


キスの合間に、俺の名前を呼ぶ


その、聞いたことのない掠れた声に
顔が熱くなる


なに?!なに?!

ほんとどーした?!


翔「んっ…さと……ンっ…ぁ……ちょっ!智!!」


訳も分からずキスされ続けた俺は
いい加減にしろ!と、智の胸を押し唇を引き離した



でも、まだ直ぐ目の前にある智の顔


はぁはぁ…と上がった息がかかる



なんで…なんで…そんな顔…


智「翔、早く戻る」


翔「、…」


真剣な声


その声が…その顔が……
俺の心に追い討ちを掛けた



俺は……俺は…
役立たずで…
出来損ないで……狂ってて………
そんな俺は……




翔「さとっ……早く……帰ってこいっ…!」





貴方には嘘が付けない









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