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仔犬のパレード

第4章 歯






雅紀「ぅあぁ……ぁああ……!…、」


震える手を俺から離し
乱暴に顔を覆う




翔「…雅紀」


俺は、雅紀の耳元へと手を伸ばし
髪をすくように、ゆっくりとそこを撫でた


翔「大丈夫だ」


雅紀「ぅう……っ…ぁぁ…!」


ボタボタ…ボタボタ……


血なのか涙なのか鼻水なのか


翔「大丈夫。大丈夫」


顔を覆う手を包み
何度も何度も大丈夫だと伝える


カタカタ


カタカタ


震えの止まないその手


ぎゅっ。と強く握り締めれば
やがて震えが止まり


雅紀「、……」


まるで、蝋燭の灯火を息で ふっ。と吹き消す様だった


ポスンっ


翔「おっ」


俺の上に落ちてきた重み



……軽



あちこち、何処だかもわからないけど
強い痛みに、意識を持ってかれそうな怠さ

でも、俺はその普段の何倍も重い腕をなんとか持ち上げて
雅紀の細っこい背中に手を回し


しっかりと、しっかりと力一杯抱き締めた










雅紀の肩越しに見た広間は 灰色に染まる


ぁー…そろそろ、夕飯作んねーとなぁ…



なぁ雅紀


なぁ潤


今日は肉もあるし、いつもより豪勢にしちまおうか

智には、内緒だぞ?

まぁ…
バレた所で、怒らねーと思うけど



なぁ和也


いつかお前にも…俺の作った飯
食って貰いてぇな…

それに、早く起きねーと
智と雅紀に一粒残らず、米食われちまうぞ






……


なぁ智


お前、いつ帰ってくんだよ
早く…早く帰ってきてくれるんじゃなかったのかよ……


翔「…バー…カ…」


早く戻ってこいよ

俺…疲れたよ…頭いてぇよ……

だから
早く俺にキスしてよ…




割れるような頭の痛さ
俺は、ちょっとだけ休もうと目を閉じ…




猿「……ぅヴ……ゴボッ!
…………ハァ…はぁ…っ…」





智…


猿「、…こ…んの…!…
クソ 犬どもが……っ!」






俺さ…




━ド ン……っ……







智…


さ…とし…




さと し…………ご めん……━━━







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