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仔犬のパレード

第1章 捨



ーーーーー…………ーーー…


翔「は?…え?うわっ!なんだこれ?!」


扉の開いた先は、通路とは比べ物にならないくらい
あちらこちらが、衝撃映像のオンパレード
テレビだったら、俺と智以外は全部モザイク
なんなら、鼠やウジが可愛く見えるくらい


爪先で歩きつつ
なんとか智がいる部屋の奥まで辿り着けば


翔「ぁ……その子?」


智「…あぁ」


そう答えた智の横顔は
怒っているようにも、哀しんでいるようにも見えた


つかその子…

翔「生きて…なくない?」


部屋の隅で、体育座りをしている……が(ピーー)←自主規制


智「生きてる。今さっき堕ちたけど」


良く見れば、血だかなんだかで汚れた小さくほっそい手は、智の手のひらに乗っている


智「翔、急ごう。この子死なせたくねぇ」


そう言った智の真剣な声
あの時の声だ



翔「…これ、使って」


俺は、自分のコートを脱いで智に差し出す


智「ん?…あぁ翔は兄ちゃんだなぁ」
ふふ。と声を漏らす




あー
そうか、この子も…


翔「ここは?どーすんの?」


智「弔ってあげて」


あっという間に その子をコートで包み込み
でも壊れ物を扱うように、優しく智は抱き上げる


翔「先に行ってて。すぐに追い付く」


智「頼んだよ。」


足早に部屋を後にする智の足音を耳で見送り




もうさぁ ここに魂なんてひとつもないと思う

俺だったら死んでまでこんな処 いたくないから…



けれど


翔「天国。あるといいね。」


なぜだかこんな言葉が出て

小さな亡骸が転がるこの部屋に



俺は 火をつけたーー…





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