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短編集?

第3章 精子ドナー

「ん…ふっ…」

艶めかしい吐息が漏れて

ビーコンが彼女の体内に姿を消した

『ビーコンの動作を確認しました

10分以内に性行為を終了してください』

無機質なアナウンスが天井のスピーカーから流れる

監視カメラはついていない

だけれど、僕たちの状態はビーコンを通して隣の部屋で見られている

「早く、ホールに挿れて」

ドナー用語で彼女がせがんだ

10分

それで終わらなかった場合は

ドナーも、被提供者も失格になる

そっと彼女の粘膜に自分のペニスを這わせる

熱い体温と体液のヌルヌルが

早くも快楽を与えてくれる

膣口に亀頭の先を埋めると

括約筋がキュッと締まって反応する

声を出すまいと口を覆った彼女を見て

「入れるよ」

と声をかけると

無言で首を振って肯定した

腰を突き出すと

生の女性器の感触がして

彼女の中に入っていく

熱くて

ヌルヌルで

イボイボして

コリコリして

輪っかを作って

締め上げてきて

一抹の快楽をくれる

「不思議よね」

彼女が言う

「心臓も

脳も

胃も、肺も

腸だって自分のためにあるのに」

ペニスを咥え込みながら

「子宮だって自分の存在を複製するためにあるのに

膣は男の人の精液を受け止めるための

他人のための臓器なんて」

「そういえば、そうだね」

何にも考えずに、返事がのどから出た

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