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まだ見ぬ世界へ

第10章 想いを紡ぐ

【今日もお願いね】

スマホに表示されるLINEのメッセージに思わず溜め息が漏れる。

俺は理科室に向かい、資料室のドアを5回ノックした。


これが俺たちの合図。







「んあっ…あっ、いや…っ」

「何が…嫌なんだよ…っ、こんなに、締め付けてるのに…っ」

「ダメっ、もう…ああっ!」

「じゃあ…止めるか?」

「いやっ!止めないで…」

「じゃあ、遠慮なく…っ!」

「んあ…っ、もっ…と、お願いっ」

ドア越しから漏れる先生と生徒の情事の喘ぎ声を
何で俺が聞かなきゃいけないんだ。

その声も聞こえなくなり、暫くするとカチャっとドアが開く音が聞こえたので俺は顔を机に伏せた。


でも毎回、気になるんだよな。

どんなヤツが来てるんだ?


理科室を出ていく寸前に顔を上げ、出ていくヤツの姿を目で追った。


ん?

アイツ、確か先週も来てたような……


「んー!気持ち良かったぁ……」

一仕事終えたかの様に、手を上げて伸びをしながら資料室から出てきた。

「そんなことは知らねーよ」

俺はその姿に思わず睨み付けてしまった。

「怖い怖い……生徒が見たら泣くよ?仏の大野先生なんだから」

「そんな顔させてんのは誰だよ」

机に置かれた白衣を思いっきり投げつけた。

それを受け取り、フワッと白衣を纏う姿もいちいち男前だからまた腹が立つ。

「今日のヤツ、ハマりそうだわ」


お前の感想など聞きたくないわ!


「先週もあの子じゃなかった?」

でも少し気になって聞いてみた。

「おっ?興味出てきた?」

嬉しそうに俺の顔を覗き込む。

「ちげーわ!」

全力で否定させてもらう。


いくら男子校だからと言っても、男には興味がない。


「いつでもウェルカムだからね」

「いつか、バチ当たるよ?見境なしに生徒に手を出したら……」

「大丈夫、大丈夫!」


その自信は一体どこから来るんだ?


「まぁ、程々にね」

「それよりさ……今、狙ってるヤツがいるんだよね」

ニヤリと笑う櫻井先生を見て、背筋に悪寒が走った。

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