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ソレは、そっと降り積もる・・・。

第14章  障害物狂想曲━ クレッシェンド ━

  


「じゃあな、〝黒髪の乙女〟。」


 男が去って行く。そのまま床に倒れて意識を手放した。

 》 *

「もうすぐ救急車が来ますよ。」


 電話を終えてドア前に戻ると向こうで騒いでいた男が静かになっていた。


「いいえ。もう、必要ありません。」


「なんですって?あんなに騒いでいたと言うのに。」


「こちらの用事は、済みました。」


「〝なにを〟言っているのですか?」


 ドアの向こうの男が言っている意味が判らない。


「あなたをここに足止め出来ればよかったので。」


「なんですって?」


「早く行かれた方がいいですよ、〝黒髪の乙女〟の処へ。まぁ、もう・・・遅いですが。」


「なっ、珱月さまに〝なにを〟っ・・・」


 男の言葉に2階を見た。
 防音の行き届いたこの屋敷では、音も声も訊こえない。



 それは、クモの巣・・・。


  

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