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ソレは、そっと降り積もる・・・。

第6章  〝愛〟を知らない

  


 私たちは、〝愛〟を知ることなんかない。


 《 《 *


「珱月、出掛けるぞ。」


 窓辺でお茶を口にしている彼女に声を掛ける。この頃には、彼女の抵抗はなくなっていた。


「外は、まだ寒いぞちゃんとコートを羽織れ。」


「珱月さま、行ってらっしゃいませ。」


「ありがとう、マリー。お茶が無駄になちゃった・・・ごめんね。」


「構いません。お帰りなったらまた、お淹れしますね。」


「ありがとう。」


「さぁ、行くぞ。」


 メイドに笑顔を向ける彼女の手を掴み歩き出す。


「お気を付けて。旦那さまと珱月さまを宜しくお願い致します。」


「お任せを。」


 執事は、運転手に声を掛ける。2人が乗り込むと高級車は、走り出した。


「珱月、行き先を訊かないのか?」


 最近必要なこと以外は、ほとんど口を利かなくなった。


  

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