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ソレは、そっと降り積もる・・・。

第1章   最悪の出逢い

  


 優しい両親には、悪いけどこの生活から抜け出したかった。


 《 《 *


「ん・・・・・・っ」


 身体が痛んで目が覚めた。


「本当、だったんだ・・・・・・」


 部屋は、客との部屋だった。しかし男は、姿を消していた。


「帰ろう・・・」


 考えてみれば〝無断外泊〟だ。部屋の後始末をして外に出た。幸いにも早朝で誰にも逢わなかった。


「っ・・・!!」


 下腹部が痛む。


「っ、ぅうう・・・」


 痛む度に涙が零れる。昨日の喪失は、現実だと身体が教えている。涙を拭って家路を急ぐ。
 両親に無断外泊を責められても決して言えない。


「え・・・・・・っ??」


 格安木造アパートが家族4人の家である。その敷地にテレビでしか見たことのない高級車が停まっている。


「お帰りなさいませ、珱月《エル》さま。」


  

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