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狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】

第1章 10年ぶりの再会

「とはいえ、ムチャクチャ怒っているよなアイツ」

怒ると怖いんだよな…ハンパなく。

落ち込む気持ちを奮い立たせ、オレは目的の階に到着した。

部屋の扉の前で、インターホンを鳴らそうと手を上げた。

「いらっしゃい、雅夜」

けれどいきなり扉は開かれた。

利人の手によって。

「うをっ! よく分かったな」

「そりゃあ雅夜の気配なら、よく知っていますからね」

…気配を悟られてしまっているのか。

利人は会社で見たスーツ姿のままだった。

「どうぞ。まだ引っ越してきたばかりで、散らかっていますが」

「あっああ…」

中は散らかっている…というより、何もなかった。

必要最低限の家具しか置いてなく、広いリビングにもテーブルとソファー、それに大きなテレビが一つ置いてあるだけ。

オレの部屋が二つ分ぐらい平気で入りそうなリビングが、余計に広く見える。

「なっ何か、物少ないな」

「ええ、引っ越しが急だったので」

「急な辞令だったのか?」

「いいえ」

利人は振り向き、ニッコリ笑う。

あっ、この笑顔はヤバイ。

「雅夜があの会社にいることを知ったのが、つい最近だったんですよ。なので本当は私はここに来る予定はなかったんです」

「それはつまり…」

本当は利人以外の人間がウチの会社に来る予定だった、ということか。

でもそれは急に変わった。

理由は…オレがこの会社にいたからだ。

だから利人は来た。

…分かっていたことだが、改めて言われるとダメージを受ける。

そんなオレの顔を見て、利人は満足そうに頷いた。

「察していただけたようで嬉しいですよ。ついでに私の怒りも察してくれると嬉しいですね」

…心ん中、怒りまくっているヤツに言われてもなぁ。

「って言うか、何でウチの会社の本社にいたんだよ? てっきり親父さんの会社に就職したと思っていたのに」

「今はまだ、修行中の身なので、身内の会社には勤められないんですよ。外で修行してこいとのことなので」

…そうですか。

一般民のオレには分からないことだ。

そう思いながら、一人用のソファーに座る。

黒い皮張りのソファーは、これ一つだけでオレの給料二か月分はあるな。

利人は斜め向かいの二人用のソファーに座る。

この位置は…非常に微妙だ。

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