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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第1章 出逢い


 ―― ゴクッ ゴクッ ゴクッ

 ……ぷはぁぁ~っ。

  
 こうゆう時のお酒って意外とどんどん
 イケちゃうからふ・し・ぎ。
  
  
「ねーぇー、マスターおかわりー」

「絢音ちゃん、今夜はかなり進んでるよ、大丈夫?」

「ん~……と、思う。1人で歩けるしー」  


 マスター・結城は苦笑しつつ、
 カウンター越しに絢音の差し出したカットグラス
 へ新たな芋焼酎を注いだ。
  
 すると、絢音の後方から男の声が ――、
  
  
「マスター、その焼酎、俺にツケといて?」


 バランスのとれた体躯に細身のスーツ ――、

 周囲の視線を一身に集める研ぎ澄まされた美貌、

 称賛と感嘆・劣情を滲ませた歓声に包まれ、

 男は絢音の近くに立った。
  
  
「こんばんわ、隣、座っても?」

「どーぞぉ? 私の指定席やないしー」


 男は自分のドリンクをマスターへオーダーし、
 1人分の席を空けて座った。
  
 そして、テーブルへ肩肘ついて、
 絢音の横顔をじぃーっと見つめる。
  
 絢音はしばらくその図々しい視線を平然と受け止めて
 いたが ――、それにもいい加減うんざりして。
  
 深い溜息をついたあと。
  
  
「つきなみな質問だけど、私の顔に何かついてます?」

「ん~……眉がふたつ・目もふたつ、鼻が1個に
 口も1個ってとこかな」
 
「あー、おもしろー」


 (何なの? このオヤジ)
  
  
「なぁ、俺と寝よう」

「……は、い?」

「セッ*スしようって言ったの」

「アタマ、大丈夫? 何なら精神科のいいドクター
 紹介するけど」
 
「あー傷つくなぁ。これでも勇気奮い起こしてキミ
 みたいな可愛い子に声かけたのにぃ」
 
「で、いきなりエッチしようって誘うワケ? 
 おっさん、どんだけ溜ってんのよ」
 
「回りくどいの嫌いだし」


 絢音は”ブッ”と、噴き出し、そのまま
 笑いのドツボにはまり、ゲラゲラ笑い出す。
  
  
「―― 俺、竜二」


 絢音、笑いすぎて痛む脇腹を手で押さえつつ、
  
  
「私は絢音(あやね)」       
   
  
 このあと2人は特に言葉を交わす事もなく、
 互いに酒を飲み干し ――、
 どちらともなく奥まった一室、
 パウダールームに姿を消した。

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