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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第28章 試練


「それじゃあ、言わして貰おうかな」


 と、彼女は席から立ち上がって
 真っ向から利沙に対峙した。


「あんた、何様のつもり?」

「あ?」

「親友だか幼なじみだか知らないけど、
 そんなにあの淫乱女が大事なら、いっそ自主退学
 してよ。目障りなの。迷惑なの。あの子、元いた
 京都のド底辺校でも問題児だったそうじゃない。
 あの子1人のおかげでこの港南台がどれだけ評判
 落とされていると思ってるの??」


 神宮寺さんの言った”ド底辺校”とか
 ”目障り”とか、”淫乱女”という言葉に
 クラスの皆が大きくざわつき始める。


 怒りの感情に流され利沙が神宮寺さんの
 胸倉を掴んだ、ちょうどその時。


『―― 聞こえなかったぁ?
 もう始業ベルは鳴ったわよ~。
 ほ~らさっさと席に着きなさい。
 ホームルーム始めまぁす』


 と、担任の中嶋女史が教壇へ立ったので、
 利沙と神宮寺さん、一触即発の事態は免れ、
 2人共静かに席へ着いた。


『じゃあ、今日はまず転校生を紹介します』


 あと、数ヶ月で卒業という時期外れの転校生に
 クラス中がざわめく。
 
 
『はーい、静かにぃ! ―― 佐藤さん、入って
 いいわよ』
 
 
 の、声掛けで前方の扉から入ってきた、
 楚々としたお嬢様転校生、佐藤 和美に、
 皆の目は釘付けだ。
 
 絢音の驚きはひと際大きい。

 それもそのハズ。
 和美は裕との決定的破局の原因を作った
 張本人だ。

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