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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第3章 私立・壬生四条高校


「―― すみませ~ん」


 近くの学校の裏門から小走りに出て来た生徒が声を
 かけてきた。
 3年生、和泉 絢音(いずみ あやね)

 彼女はクラスメイトの打ったホームランボールを
 彼の部活引退記念にしようと拾いにきたのだ。

 竜二は振り返って絢音を見て、何故かドキッとして
 立ち止まった。
 絢音も内心ドキッとしたが平静を装う。
 

「あ、あのぉ ―― ボール、投げてもらえます?」


 竜二は笑顔で答えた。


「あ? あぁ、もちろん」


 と、手元のボールを絢音に放ってから。


「ソレはキミが打ったの?」

「いえ、友達です」


 何となく絢音は竜二が自分を妙に長く見つめている
 ような気がした。

 私の顔に何かついてるのかな――?

 もちろん『フィガロ』のトイレで
 この男と行きずりのセックスをした事は
 覚えている。

 が、あくまでもアレはあの場だけの割り切りだった
 ハズ……妙に関わり合いたくはない。
 
 絢音は竜二にペコリと頭を下げるとクルリ背を向け
 裏門へ走って戻っていく。


 門を入る時チラリと見ると、竜二は足早に路肩へ
 停めてある車の方へ行ってしまった。

 何となくがっかりした。

 もちろん絢音は竜二とその後とんでもない
 係わり合い方をするとは、この時知る由もなかった。

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