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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第20章 季節は冬へ


 12月に入ると、
 年の瀬って雰囲気も一気に盛り上がり
 街はすっかりクリスマスモード一色だ。

 夜ともなれば色とりどりのイルミネーションが
 通りを華やかに彩る。

 東京では表参道や六本木ヒルズのイルミネーション
 が有名だが。

 地元商店街のモノも”捨てたもんじゃない”
 と絢音は思う。


 今まではクリスマスだなんだと浮かれた連中を
 見ては、理解できないと小馬鹿にしてきた。

 それが、気になる人が現れた途端、
 こうしてウキウキした気分になっているのだから、
 まったくもって現金なものだと自分でも思う。


 けど、各務は元の仕事へ戻って通常業務や
 来年の株主総会の準備で猫の手も借りたいくらい
 忙しい模様。

 高校教師だった時もかなりの忙しさだったけど、
 リーマンに戻った今は教師時代に輪をかけたよう
 忙しいみたい……。

 仕事なんだから、仕方がないとは言っても。

 最近、まるでかまってくれないので、
 絢音はかなりご機嫌ナナメだ。


 そんなこんなで、イマイチ勉強にも身が入らず
 教室の廊下で窓の外を見ながら黄昏てため息を
 つく、絢音の背中を誰かがバシッと叩いた。


「つっ ―― !」


 こんな無遠慮な痛みに思い当たるのは彼女しか
 いない。
 振り返るとやはり予測通り利沙だった。
   

「何よぉー、しけた顔して溜息なんかついちゃっ
 てぇ」

「ほんと少しは加減してよ。いつも言ってる
 でしょー? マジ痛いの、あんたの平手」

 
 そう言って利沙を怪訝な顔で見ると、
 じとーっと黙ってこちらを見ている。

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