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夜の影

第15章 孤高の人

【某国某氏】

社長が代替わりするというので挨拶に来たマツオカという男は、並んで座ったヒガシヤマに比べるとまだ荒い野性味があって、より雄の匂いがした。

若さの違いなんだろう。

肌 の 艶 が眩しく思われる。

私とヒガシヤマが 金 相 場 について話している間、マツオカは口数少なく控えるようにしていたが、彼の腕時計が突然pipipiと鳴った。

A社のAウォッチに見えるが、何か緊急の連絡らしい。
マツオカの顔色が変わる。



「どうかしたかね?
私のことなら気にせずに話すといい」

「失礼いたします」

軽く会釈をしたマツオカが、ヒガシヤマへ耳打ちすると、今度はヒガシヤマの目つきが鋭くなった。

「ムッシュー、アキラは部屋に一人で居るのですよね?」

静かな口調ではあるが、どこか問い詰めるような響きを持ってヒガシヤマが私に言う。

「ああ、いや…
実は今、客人を一人預かっていてね
ホテルの手違いがあって私と同室になってしまった
心配はいらない
日本人だし、
彼には寝室から出ないよう言い含めてある」

ヒガシヤマの目つきの鋭さに、我知らず言い訳口調になってしまう。



「アキラから緊急時の連絡が入りました
危険が及んだ時にだけ知らせるよう
持たせている発信機が作動している
部屋の鍵をお出しください」

「いや、しかし」

「ムッシュー
暁のアキラに危害を加えた場合どうなるか
規約は憶えていらっしゃいますね?」

「それは、勿論だ」

「では鍵を」



迫力に押されてポケットからキーを取り出し、渡した。
受け取ったマツオカが小走りにバーを出て行く。

「私も行こう」

あの男、まさかアキラに何か…。

全く、アイツは疫病神か?

暁に会員登録した際の規約を思い出す。

下手をするとパスポートを取り上げられかねない。

せめて、私に非が無いことを証明しなくては。

ヒガシヤマと共に、私も早足でエレベーターへ向かった。






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