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夜の影

第26章 in the park

【智side】

「サトシ君」

「ビンタされてるし」

プイッと顔を逸らして言ってやった。
サカモトさんが近くまで来てラグに膝をつく。

「……ごめんな、興奮して礼を言ってなかった。
君が思い出してくれたお陰で、的が絞れた。
本当に有難う。
ここから先はこちらで手を打つ。
いつか……ケンが戻って来たら、君にも必ず知らせるよ」

「ケン君はどんな目に遭ってるんすか」

「……それは言えない」

「デートクラブ? 男が男とデートするの?」

「サトシ君」

サカモトさんが駄目だと言うように首を振る。

「二宮カズナリは泊まるって言ってた。
子供の方が良い、そういう趣味の人。
つまり、そういうこと?」

まだ幼い男の子相手にムラムラする変態に、ケン君は売られた?

取り戻す為に、やっぱり男相手にデートとか、その、ヤる必要があって、十代のスタッフが必要?

「そういうことだ」

抑揚の無い声に振り向くと、ヒガシヤマさんが壁にもたれるようにして立っていた。
腕を組んで立つその姿が整い過ぎて人形のようだ。

オイラは腹に力を入れた。

「それ、俺がやるよ」

「サトシ君っ」

「…………」

返事をしないのが腹立たしい。

ヒガシヤマさんは澄ました顔で歩いて来ると、サカモトさんの服に手を伸ばし、ポケットから煙草を取り出して火を点ける。

いつものことなのかサカモトさんは気にした様子もない。
その、いかにも通じ合ってる感じに、何故だかオイラはイラッとする。

「他にアテあるの?
ないんでしょ? 
じゃあ俺がやる」


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