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夜の影

第8章 素描

【翔side】

初めて 男 と や っちゃった翌日。
目が覚めてからずっと、サトシは優しかった。

薬を飲むまではズキズキと痛くて、立つのも座るのも、歩くのも大変だったけど。

サトシはいつも傍らに居て、動くたびに俺の 躰 を支えてくれてた。

何かって言うと人をからかって「尻」と口に出すのが憎らしかったけど。



睨んでやると、毎回声を殺して笑ってて。

顔がクシャッてなって。

堪えてるように下を向いて、照れたみたいな笑い方をする。

それを見るたびに、ま、いいか、と思って。

サトシは口が悪いけど、優しい人なんだな、って俺は認識する。

気遣ってくれてるのが態度でわかるから、嬉しかった。

家族を失ってから、逃げるように隠れながら、神経を張りつめて行動してた。

誰かに優しく触れられるのは、随分と久しぶりだった。



昼寝?と言うか、サトシが作ってくれたうどんを食べて眠ってから。
目が覚めて枕元に置いてたスマホを見ると、もう15時近い。

どうせ、取 り 立 て の電話しか来ないから、スマホは機内モードにしたまんまで。

電源を入れてる意味もないんだけど。

家が 差 し 押 さ え られてから漫画喫茶とか、カプセルホテルとかで眠る日々だったから。
躰がやっぱり疲れてたんだろう。

我ながらよく寝た。



あ、そっか。

疲労は疲労でも、や っちゃったのもあるか。

や っちゃった、って、身も蓋もないな…。

サトシの口の悪さに影響されてんのかも。

こんなことをしでかした自分が可笑しくて、妙に笑えてくる。



昨夜のことを思い出せば、繋 がってから先のことは曖昧で。

サトシの手が何度も頭や顔を撫でてくれてたことと、唇 の 感触ばかりが蘇った。

いろいろと 恥 ず か し い ことを沢山されたけど。

でも。

気持ち、良かった。




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