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【智side】


「翔ちゃんっ
オイラ大丈夫だからっ
必ず戻るからねっ！！
翔ちゃんっ！！」


必死に新幹線を追いかけて走ってる翔君を見て、なんとか安心させたくて叫んだけど。


「おいっ！！」

「あっ！！」


着ていた上着ごと引っ張られて、背中から床に落ちた。


「ってぇ～」


男がオイラの上に馬乗りになって跨ってくる。
重いよっ。


「おまえ、何で俺の邪魔したっ！？」

「邪魔なんかしてないっ」


また胸倉をつかまれた。
体が浮き上がる。
目が血走ってて、尋常じゃないって、多分こういう事…。


「てめぇ、ふざけんなよっ！
ホントのこと言え！！
おまえ、どこのもんだ！？」


拳を振りかざしてる。
ケガはまずい。


「どこのもんって
あんた、知ってる人だと思ったんだっ
会ったことある人だと思ったからっ」

「ああん？」

「あんた、見たこと有ると思って
オイラの親戚に関係してる人かと思ったんだよっ」

「誰だ、そいつは！？言ってみろっ
いい加減なこと言ったらぶっ飛ばすぞっ」


あぁ、これは話が出来る状態じゃないかも。
男の拳が震えてる。

ごめん、翔君。
ごめん、みんな。


「おらっ、早く言え！！」


体が更に上に持ち上げられた。
拳から目が離せない。


「ボンちゃんだよっ
気仙沼の大野※※」

「ああん？気仙沼の大野※※…？
って…バカボンのことか！？」

「そうだよっ」

「はぁ？…バカボンが何で出てくんだ？」


やっぱりボンちゃんのこと知ってる人だ。
男の声から怒気が消えたから、しっかり目を合わせて言った。


「だからオイラ親戚なんだっ
あんた見た時、ボンちゃんと一緒に会ったことある人だって思って」

「じゃぁ、おまえ、バカボンの親戚なの？」


体はまだ浮いてるけど、振り上げられた拳から力が抜けたのがわかる。


「だから、さっきからそう言ってるじゃんっ
離してよっ」

「あ…悪ぃ…」


男はオイラが言ってる意味をようやく理解したみたいで、やっと上からどいてくれた。


「痛ったぁ～…」


腰と向う脛がジンジンしてる。
骨は大丈夫そうだけど、興奮してるからまだわかんない。
起き上がって腰と脛を手で擦る。

正面を見ると、男は呆然とデッキの床に座ってオイラを見ていた。