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my destiny

第16章 Accident 3

【翔side】


『しょおくんっ』

「智っ、無事っ?」

『しょおくんごめんっ
オイラのせいっ、うっ…』


ああ、泣いてる。

俺は覆面パトカーの後部座席で、私服の警官に挟まれて座ったまま、何も出来ないのが堪らなくて拳で腿を叩いた。

男の動機や目的が不明だから、警察は今回、テロと同じ扱いで動いてる。
乗客全員を人質に取る可能性もある、ってことで。

車は郡山を目指して東北道を飛ばしてるけど、通話に音が入るからサイレンは鳴らせない。

なんとか郡山に新幹線が着くのに間に合って欲しい。
郡山での確保に向けて態勢が整うまで、新幹線は時間稼ぎにゆっくり走ってる。

話がどんどん大きくなるのを止められず、気持ちは焦るばかりだ。


「怪我は?酷いことされてない?」

『だいじょぶ…っ…
このお兄さん、ボンちゃんの友達だった
…っ…しょおくんは?』


お兄さん?
ボンちゃんの友達?

もらった情報から智君の状況を推察する。
それなら、多分本当に酷いことはされてない。
テロが目的じゃないんだ。

そりゃそうだ、あの格好と雰囲気はテロに見えなかった。
だからって、素人の俺が口を出すわけにもいかない。
ったく、なんて偶然だ。

それより、まず安心させないと。
とにかく今のところ智君は無事だ。

優しく、何でもないみたいに言うんだ。
智君は、話がここまで大きくなってるなんて思ってない。


「俺は大丈夫だよ
今そっちに向かってるからね
迎えに行くから待ってて」

『…っ…しょおくん、今どこにいんの?』

「ん?今ね、高速をすっ飛ばしてるとこ
郡山で新幹線が止まるから、そこで降りるんだよ
降ろしてもらえそう?」

『うん、次で降りろ、って言われた』


両脇で会話をモニってる刑事さん達と目を合わせて頷き合う。

男のことをお兄さんって呼んでるし、コミュニケーションは取れてるんだろう。


「智、ここから先は返事だけでいいから
俺の話良く聞いて」


ここからが肝だ。
慎重に。
そして、必要があれば大胆に。

気合を入れろ、櫻井翔!!


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