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my destiny

第6章 Pray

【翔side】

あの人は優しさの塊みたいな人だけど、自分のことについては頑固だ。

正面から、何か悩んでるの、なんて訊いたところで、まず本当のことは言わない。

大体、俺だって、この年になって、他人から悩みでもあるの?なんて訊かれても、恐らく本当のことは答えないし。

相手が俺だから言えない種類のことなのか、とも思ったが、ニノや松本が探りを入れても、智君は何の話をされているのか理解していないような口ぶりだったという。

自分では普通にしているつもりなんだろう。

家で顔を合わせる短い時間で、あれやこれやと変化球でボールを投げてみても、はぐらかして話を逸らされるばかりで、埒が明かない。

現場には今のところ影響は出ていないようだけど、智君がいつまで持つか。

もう、様子を見ている段階ではなかった。





浴室を出ると、Tシャツと下着だけ身に着けて、リビングへ向かった。

部屋の空気が冷えているから、エアコンを入れる。

智君は、ソファの脇、ラグの上に、コロンと丸まって寝息を立てていた。

そのまま寝かせてやりたい。

けれど、今を逃してしまうと、いつ向き合えるかわからない。

可哀相だけど声を掛けて起こすしかない。

怯えさせないように、責めてる口調にならないように、優しく、と俺は自分に言い聞かせた。


「智?風邪引くよ
ベッドに行こう?」


肩に手を置いて小さく揺すると、目を覚ます。
俺を認めると、フニャっと笑った。


「翔君、おかえりぃ」


さっきもベランダで話してるのに、今俺が帰宅したみたいなことを言う。

智君が腕を伸ばしてきたから、そのまま俺の首に回させて、膝の裏を持ち上げて抱きかかえた。

貴方、軽くなったね。


「あったかいね…」


俺の耳の傍で、智君が小さく呟くのが聞こえた。





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